
かつて購入検討者の親の存在は、販売担当者からすると“敵”でしかありませんでした。
親は子を思うがゆえに、子の多額の借金を心配し、購入に突っ走りがちな子を制していたものです。
私が販売現場にいた頃にも、多くの親が子の住宅購入を心配し、モデルルームを訪れては
「うちの子をだまさないでよ!」とばかりにらみつけていたものです。
特に変動金利しか勧めないような営業担当者には、
「この低金利時代に変動金利を勧めるとは何たることか?!」と抗議してくるほどでした。
ところが最近はやや様子が異なるようです。
私のところに相談に来られる方の中にも、本人よりも親の方が購入に前向きであり、
もし資金的に問題があるなら自分たちが援助してもよいから購入すべきと意気揚々としているのです。
「家賃を払うなんてもったいない!」、「早く住宅ローンの返済を始めた方が月々の支払が安くすむ」と
親が率先して子の住宅購入の後押しをします。
そしてそれは自分の経験に基づいたアドバイスであり、
“マイホーム購入”こそが人生の幸せのひとつであると信じて疑わないという背景があります。
しかし、親の世代とはマイホーム購入時の“時代”が大きく異なります。
現在、購入検討者の中心は30代です。
よってその親の世代は1970年台前後に結婚、出産、そしてマイホーム購入をした世代となります。
1970年台前半は、日本はまだ高度経済成長期にありました。
当時は物価上昇率が年平均15%を超えておりましたが、
賃金上昇率もそれをさらに超えた水準で推移しておりました。
そのため、当時は年々生活が豊かになることを実感できていたはずです。
しかも当時の住宅ローンは住宅金融公庫融資や公団の割賦販売が主流でしたので、
基本的には住宅ローンの返済額は固定金利により一定であることがほとんどでした。
またもし仮に変動金利で借り入れていたとしても、
賃金が物価水準を上回るペースで上昇していましたし、年功序列制の賃金条件では
家計が直ちに苦しくなることはなかったのでしょう。
さらにその時代の首都圏のマンション1戸あたりの平均価格は1,500万円前後です。
そのうえ既に年金を受取っている親世代はもちろん、今後数年以内に年金を受取る世代は
今の30代より多くの年金額を受取れる可能性が大です。
そんな経験に基づく親世代のアドバイスが、はたして今の勤労者に通用するのでしょうか?
また昭和30年以来一度も下がったことのない教育費の物価。特に子育て世代にとっては
親の世代が経験したことのない、想像もできない未来が用意されていると考えるのが妥当です。
よって、全く異なる経験をしてきた親のアドバイスなど、
こと家計についてはあまりあてにすべきではないと思います。
それでも親が自己の経験を基にマイホーム購入を勧めている場合、“時点補正”が必要です。
親の世代と今との賃金や物価水準、景気や社会保険制度などを鑑み、
どれほど親世代との乖離があるかを計算し、そのうえでアドバイスを受けとめなくてはならない・・・
しかしそれはあまりにも違い過ぎるため、結果的には参考にはならないのではないでしょうか?
親のアドバイスですから、そうそう無視するわけにはいかないのでとりあえず話しは聞いておき、
現状と将来のライフプランを情報収集に基づきよく考えてみる必要があります。
それでもわからなくなったら、もしくは不安を感じたら、やはり専門家に相談するのが一番です。
何度も述べますが、相談料など住宅購入の失敗に比べたら微々たるものです。
必要なら親の経験談にも根拠をもって説得します。ぜひ親御さんと共にご相談ください。
Life & Home Solusion 代表 西澤 京子